天壌無窮の神勅
今回は古事記が示す日本の成り立ち、特に天孫降臨と日本統一についてです。早速みてみましょう。
高天原(たかまがはら=天上界)を治める一番貴い神様が天照大御神(あまてらすおおみかみ)でした。天照大御神は、日本列島を治める者は皇統を受け継ぐものでなければならないことを、お孫さんの「邇邇芸命(ににぎのみこと)」に宣言し、治めに行くことを命じます。その際述べられた言葉を「三大神勅(三つの神のお言葉)」と言います。その一番目が先にも述べた、
『天壌無窮の神勅』です。詳しくみてみましょう。
原文(漢文): 葦原千五百秋之瑞穂國、是吾子孫可王之地也。宜爾皇孫、就而治焉。行矣。寶祚之降、當與天壤無窮者矣。
読み下し文:豊葦原(とよあしはら)の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂(みずほ)の國は、是(こ)れ吾(あ)が子孫(うみのこ)の王(きみ)たるべき地(くに)也。宜しく爾皇孫(いましすめみま)、就(ゆ)きて治(しら)せ。行矣(さきくませ)、寶祚(あまつひつぎ)の隆(さか)えまさむこと、当(まさ)に天壤(あめつち)と窮(きわま)り無かるべし。
現代語訳:日本国は、我が子孫が治めるべき国である。さあ瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)よ、行って、しっかりと治めなさい。恙(つつが)なくお行きなさい。天津日嗣(あまつひつぎ;寶祚=皇位)は、天地と共に永遠に栄えることでしょう。
【日本を知ろう】國體2でも簡単に述べましたが、これが日本にとって重要な神勅です。皇統が日本を治める限り日本は永遠に続きます、とのありがたいお言葉です。この神勅に従い日本人は皇統を126代の永きに渡り受け継いでいるのです。
なぜか、それはまたおいおい。
神武東征
邇邇藝命(ににぎのみこと)の天孫降臨(高天原から日向国の高千穂峰へ天降(あまくだ)ったこと)から日本列島統治に向けて動きだすのですが、なかなか一筋縄ではいきませんでした。当時日本は統一国家ではなく、さまざまな部族が各地を治めていたからです。
そしてようやく統一したのが邇邇藝命(ににぎのみこと)のひ孫である、神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト)です。兄の五瀬命(イツセノミコト)と日向の高千穂で、葦原中国(あしはらのなかつくに=日本)を治めるにはどこへ行くのがよいかと相談し、東へ行くことが最良だと決め、舟軍を率いて旅立ちました。途中、五瀬命が命を落とすなどのさまざまな苦難を皆の協力や助けを受けながら乗り越え、ついには橿原宮(現在の奈良県橿原市)で初代天皇(神武天皇)として即位しました。
高千穂(九州)から東へ向かいながら、橿原宮で即位するまでの一連の過程を「神武の東征」といいます。(ちなみに神武天皇が橿原宮で即位した日が日本の建国記念日(2月11日)です)
即位建都の詔
そして橿原宮で即位された神武天皇は統一国家を運営していくに当たり次のような宣言をなさいました。
即位建都の詔(みことのり)(前段)
「夫(それ)大人(ひじり)の制(のり)を立て、義(ことわり)必ず時に従う。苟(いや)しくも民(おおみたから)に利(くぼさ)有らば何んぞ聖造(ひじりのわざ)に妨(たが)わん。且つ当(まさ)に山林を披(ひ)き払い宮室(おおみさ)を経営(おさめつく)りて恭みて宝位(たかみくら)にのぞみ、以って元元(おおみたから)を慎むべし。」
ここでは統治する天皇自らが、国民が一番大事(おおみたから)であることを高らかに宣言しています。国民の利益になることが大前提とのお考えであり、「民利政治」の原則を謳っています。
即位建都の詔(後段)
「上(かみ)は則(すなわ)ち乾霊(あまつかみ)の国を授けたまいし徳(うつくしび)に答え、下(しも)は即ち皇孫(す めみま)の正(ただしき)を養いたまいし心を弘(ひろ)めん。然して後に六合(りくごう)を兼ねて、以って都を開き、八紘(あめがした)を掩(おお)ひて宇(いえ)と為すこと亦可(し)からずや」
ここでは、次のように述べています。「政治を行うものたちはご先祖様である神々の徳を受け継つぐように、また国民には皇孫の正しい心や行いを広め、共に良い国を創っていくことを願う。そののちに、この都を中心に日本を統一し(この時点では奈良以西だけ統一)、さらに世界中を掩(おお)って、一つの家と成し、すべての生命が家族のように仲睦まじく暮らすことは素晴らしいことではないか。」
ここが有名な「八紘一宇」です。これは世界征服を意図したものなどでは全くないですね。皆で仲良く良い国を創っていこう!とする宣言なのです。
國體の神髄
ここまで、天孫降臨~神武天皇即位までの経緯をごく簡単にまとめてみました。日本人として日本の神話を「知っておく」必要があると思っています。それをどう読み取るかは皆さんの自由です。
さて、いままで国體国體と何度も述べてきましたが、上記に述べた
『天壌無窮の神勅』と『即位建都の詔』(建国の詔ということもあります)
の二つが、我が国の国體を最もよく表しています。つまり、
1.万世一系の天皇が治めるこの国は、未来永劫栄えること
2.天皇を中心(親)とし、国民を大切な宝(家族)とし、国民の利益にかなう政治を行うこと
この二つこそが「日本とはどういう国か」の答えです。
皇室を戴き、皇室を中心とした「大きな家族」のような、国民第一の政治を行う国。これこそが日本の「國體」ではないか、ととうさんは考えます。 国體を理解するには「天皇」という存在を理解せねばならず、それを知るには我が国の成り立ちを理解する必要があると述べました。我が国の成り立ちと「天皇」の存在についてはおぼろげに理解していただけたのではないでしょうか。次はもう少し詳しく、神話の世界と現代のつながりについてみてみましょう。
とうさんが敬愛してやまない、渡部昇一先生の歴史書
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